Social Capital

*最初に* 今日のは長いですよーーー だから、時間があるときに読んでね!!

この大学院に来て良かったと思うことは、素晴らしい先生たちが多いこと。
特に、教育開発の分野の3人の先生たちは、経験も知識も本当にすごい先生が多い。
毎週木曜日はジョイントセミナーで、毎回2人の学生が自分の調査について発表するんだけど、その発表に対するコメントを聞いていると、本当に鋭くて毎回とても勉強になる。

今日、月曜日の2時間目は、その中の一人の先生の授業。
この先生は、UNICEFで長く働かれていて、現場の経験も豊富だし、
研究者としての見識もすごいし、知識も豊富。そして、鋭い。
でも、授業では、ちゃんとみんなの笑いもとってくれるし、
ものすごく、いい雰囲気と言うか、こう、やる気が出てくる。

今日の授業のテーマは、Social capital (社会資本)の話。
これが、とても面白かった。ちょっと、感動覚めやらないうちに残そうと思います。

Capital、 資本 と言われると、どうしても“お金”“財産”というイメージがある。
でも、実はお金という意味だけじゃなくて、
“価値のあるもの”“資源”という意味も大いにあると思う。

それで、Social Capital っていうのは、直訳すると社会資本となって、
最初に提唱したのが、Harvard university のRobart Tackman だそうです。
Economy やPolitical science の分野で活躍していたこの方は、
イタリアの南北の違いを比較して、Social Capital が経済活動に影響を与えていることを検証したそうです。
ここで、Social Capital とは、Social networks, social ties, norms, trust, culture of caring, relationships, values, civil society development 等々というもので、
つまり、目には見えないけれど存在していて、その社会の規範を保つのに重要な役割を果たしているものだそうです。
例えば、お葬式等々があったときに近所の人たちで助け合って執り行うとか、
何か困ったことが起きたら、お互いに協力し合う文化だとか、後は人脈、人間関係等々です。
それで、それらが強く存在しているとうことは、人間同士のつながりが強く、
経済活動にも正の影響を与えているそうです。
確かに、日本の商社も、コミュニティではないけれど、企業同士のつながりというかネットワークを十分に強化しながら経済活動を行っているものの一つなんだと思います。

他にも例えば、学校におけるクラブとか、同窓会なんかでできたつながりも、ネットワークに入るそうです。
同じクラブで活動を一緒にしたときに、同じ価値や目標を共有する。
それを通して、人間関係ができていく。その人間関係がSocial Capitalの一つ
だと考えるそうです。

で、例えば、20年経って同窓会を行ったとする。
そこで、一人がお菓子屋さんを経営していて、一人が小学校の先生をしている。
その二人が再会して、小学校の先生が
「じゃ、今度、うちの学校の総合の時間の授業で、子どもたちにお菓子作りや、日本の伝統に関しての授業を行ってくれたら嬉しいなぁ。もちろん謝金は出します。」
となったら、そこから経済活動が発生することになる。
この例だと規模は小さいかもしれないけれど、他にも沢山のケースが存在していて、
そんな積み重ねで、Social Capitalが、経済活動に影響を与えていると
いうことになるんだと思う。

後、先生が紹介されていたのが、ネパールの森林管理に関する話。
ネパールは、山間部に位置する小さな国なので、農民にとって森林資源は大事な生活の糧。でも、貧困の人たちは、将来のことや環境のことを考えずに木を伐採してしまう。
そこから負の循環が、生まれるというケースがあるとする。

そこで、例えば、コミュニティーの中で「森林管理グループ」を作って、
木を切ることに関するいくつかのきまり、つまりNormを作る。
例えば、 - この区域の中の木なら切ってもいい  とか、
― 週に1回だけ3本の木を切っていい  とか、
― 3本の木を切った人は、5本の苗木を、このAreaに植えなければならない とか
ま、考えれば、いくらでも出てくるんだけど、、、、

そして、コミュニティーの中で役割を明らかにしながら、管理を進めていく。
と言うようになると、そのCommunity、 norm、 regulation、 と言った
Social Capital が、森林管理や、その資源を使った経済活動に影響を与える。
そうです。

他にも、第2次世界大戦直前の日本の乳幼児死亡率は今のアフリカよりも高かった
ことがあるのですが、その時に行った対策の中には、
このSocial capitalを十分に生かした活動が行われていたそうですよーー

それで、ここで、どうして私が今日の授業で感動したのか!!ってことですね。


1つ目は、目に見えないものに価値があるということが認められていることに感動したこと
2つ目は、Social Capital という考え方自体にとても共感ができたこと。
3つ目は、今回、Social Capitalの概念や重要性がわかったことから、これから、この視点からも、いろんなプロジェクトや、発展途上国の社会の状況を見ていくようになれるということ。  です。

1つ目は、人間関係とか、こう、社会の常識、きまり、道徳的なことって、なんとなく大事だとは感じているんだけど、それが、それ自体として価値があると認められることって、すごいなって思う。目に見えないもの、数字ではかれないものはなかなか評価されにくい。でも、だからと言って価値がないわけではない。その、目に見えないものを“大事だ”って感じられること、認めていくことって、やっぱり大事なんだと思う。

例えば、ヘーゼルヘンダーソンさんが、愛情の経済っていって、主婦の家庭における家事も価値があるものだって言われていた。これも、家事という活動はお金は生産しないけれど、人間が生きていくのに必要な活動に価値を与える、一つの経済活動として評価をするということなんだけど、その価値が認められたら、主婦の立場がもっと上がるのでは??と言うこともあると思うんだよね。
そういう風に、今の社会に存在しながら、価値あるものとしてみられていないことが沢山あると思う。
それで、あまり考えない人は“お金”っていう指標でしか物事を計らなくなってしまう。
でも、社会の中にはもっといろんな要素が存在していて、
人間の中にも、いろんな感情、いろんな可能性が秘めれている。
それらを考える中で、「目に見えないものの価値を認める」っていうのは、
やっぱり、大事なことだと思うのですね。 はい。

で、2つ目は、Social Capital という考え方自体への共感です。
“人間関係”から生まれる“可能性” って、面白いと思う。

みなさま、“コネ” って、どう思いますか??
日本人としては、コネ= 裏 とか、陰で操る みたいなイメージがあったんだけど、
最近は、もっと広い考え方をするようになりました。
私は、コネには両面があるとおもう。
例えば、途上国の政府関係機関なんかはコネで得られる仕事とか、
個人の勝手な判断で首を切られる人 が沢山いる。
よく言われるのは、ラテンアメリカで政権が交代した場合、
その下の省庁で働く事務員たちもみんなコネで交代してしまうので、
それぞれの職員のCapacity, 能力が低く、長期的な仕事の成果が出ない。
また、せっかく誰かにTraining を行っても、その人が仕事を失ってしまうと
Training 自体の効果がなくなってしまう。 ということ。
それらはいわゆるコネ 社会の負の面を象徴している。

しかし、ある仕事で、あるポストの人材を探していたとする。
でも、その仕事は専門性の高いものであることに加え、
現地の社会や言語環境がとても特殊だった場合、、、、
いくら、日本の大学教授等々といったHigh classの人を雇ったとしても、
その人が現地の文化に適応できるか、日本のレベルから現地のレベルに応用できるか
は保障されていない。
でも、もし、そのチームの知り合いの中に、その国ので同じような仕事を
したことがある人がいたら、その人を雇ったほうが仕事の成功率は高くなる。
という風に、状況が特殊であるほど、コネや人脈から生まれるものもあると思う。

これはほんの一例なんだけど、こういう風に考えると、自分のオリジナリティーとか、
専門性をどの方向に伸ばしていくか等もっと柔軟に考えられるんじゃないかなと思うのです。

そして、3つ目の新しい視点を得られたことについて。
自分が活動していたとき、一つ「組織」と言うものに興味を持った。
もし、一つの活動を長期的に行っていきたい場合、そこに現在いる人っていうものに依存しすぎてしまうと、その人を失ったときの損失は大きくなる。
でも、もし、組織として強化して言った場合、ある特定の人を失ったとしても、
その組織に所属している他の人が変わりに業務を遂行することができる。

協力隊の活動の限界は沢山あるけれど、その中に2年(もしくは3年)という限定された期間しか活動できないということがあげられる。
更に、私は、活動において、「主役はグアテマラ人」という姿勢を貫きたかった。
どうしたら、彼らが主体的に、また活動を継続していけるのかを考えていた。
そのとき、やっぱり「組織」というものの可能性に注目せざるを得なかった。
もちろん、「組織」を立ち上げる、活動の形式を決める、活動の継続をする、
組織を運営する、等々といったそれぞれの段階において、
気をつけなければならないことは沢山あると思う。
でも、やっぱり、「組織」自体の持つ性格や可能性に気づいていなかったら、
その視点から物事を見ることすらできなくなってしまう。

ほかにも、いろんな国を訪れたとき、価値観が違うだけで、宗教が違うだけで、こんにも人々の行動が変化してしまうのか、
こんなに社会の雰囲気が違ってしまうのか!!
と驚くことは沢山ある。
その時に、これらのSocial Capitalの概念がわかっていたら、その観点から
「何でだろう??」 って、情報を集めることができると思うんだよね。

いやいや、いろんな意味で、今日の授業は本当に面白かった。
脳みそから、ドーパミン放出されまくり(笑)の90分でした。

長くなってごめんなさい。
by fujika0316 | 2009-06-20 14:46 | 近況
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